学びへのモチベーション

教師をやっていて思うことはいろいろあるけれど、その一つは、学生の学習意欲というか学習に向かう姿勢と、学力は別物だということだ。
つまり、同じ程度の学力でも、学ぶのが好きでその結果その学力に達している人もいれば、勉強にはさして関心がなく、でも必要だと認識しているために仕方なくやったり、あるいは持ち前の頭の良さでもってその成績に達しているという人もいる。
そんなの当たり前だろ、と言われそうだが(実際、事実認識としては僕も当たり前だと分かっているのだが)、教える側にとって、これはけっこう大きな要素になる。
学生の学びへのモチベーションを読み間違えると、教え方を誤る。僕はいつもこれでわりと失敗する。
要するに、できるからといって勉強好きとは限らない、いま一つできないからといって勉強嫌いとは限らない、ということ。
(これもそれだけ書けば当たり前なんだが)
学生への教え方は、学力ではなく、むしろ学びへのモチベーションに照準した方がうまくいく、というかやりやすいと思う。
大学というのは、ある程度学力のそろった人たちが(偏差値でいわば輪切りになって)入ってくるから、それは公立の小中学校なんかよりははるかに教えやすいことは事実だが、実は学習へのモチベーションは一様ではないので、本当はそこがネックになる。
モチベーションを第一基準にして入学者を選考するっていうやり方はできないものか、とふと思うが、まあそれは無理だろうな。(現実的に無理というより、おそらく原理的、理論的に無理だ。正確なモチベーションの測り方というのが存在しないだろうから)
学力も学習意欲も両方がそろっているという人たちが集まるというのが理想的なんだろうな。
(そんな絵空事みたいなことを言っていても仕方ないが。いろいろいるから面白い、という面もあるし)

それから、大学のような、教師と学生が週1回の授業以外まったく会わず、その関係が大人同士の表面的なものである場合が多いという環境も、学生のモチベーションを見抜くのを結構難しくしている。
学生の「ふだんの顔」というのがあまり見えないことが多いからだ。
1年ぐらい教えている学生をキャンパスで偶然見かけて、友だちに囲まれているその表情がまったく違って(生き生きして)いるのに驚く、ということは、めずらしくない。