練習問題とイマジネーション

ところで、文法の練習問題というのは、だいたいつまらないものである。
それでも、フランスで作られた教科書や問題集には、比較的頭を使ったようなものが多い。
たとえば、
Je vais au (  ), j'ai sommeil.
に、「1. lit 2. salle de bains 3. bureau」のどれかを入れよ、というようなもの。
auの後だから男性名詞、したがって1か3のどちらかなのだが、後に続く文がJ'ai sommeil(眠い)だから、1のlit(ベッド)しかない、というわけだ。
これでも単純といえば単純なのだが、日本のフランス語の教科書の練習問題というと、信じられないことに、もっとひどいのである。
たとえば、次の名詞に指示形容詞(ce, cette, ces, cet)をつけなさい、とあって、ただ
1. (  ) voiture 2. (  ) crayon 3. (  ) appartement
みたいなのである。(cette voiture, ce crayon, cet appartementとなる)
あるいは、所有形容詞だと、
次の所有形容詞を指示されたものに替えなさい、とあって、
1. sa voiture (私の) (  ) voiture
2. votre parapluie (私たちの) (  ) parapluie
みたいなのだ。(ma voiture, notre parapluie)
まあ、大差ないと言えば大差ないかもしれないが、日本の教科書の方には、まったくイマジネーションというものがない。
これを大学生にやらせようというのだから、学生だってあほらしいという気にもなるだろう。
僕が最近、練習問題を作るときのタネ本に使っているのは、CLE International発行のGrammaire en dialogues (Niveau débutant、著者Claire Miquel)、だが、たとえば、上の指示形容詞と所有形容詞を組み合わせた問題として、こんなのがある。
Complétez par "ce" "cette" "ces" "cet", puis par "son" "sa" "ses"。
Exemple : ( Ce ) manteau est le manteau de Léa. ( Son ) manteau est noir.
1. (  ) voiture est la voiture de François. (  ) voiture est dans le garage.
つまり、問題文全体が、「(この)車はフランソワの車だ。(彼の)車は車庫の中にある」
という意味に構成されるわけで、まあこれだって機械的であることには大差ないが、それでも、問題の出し方というか、構成の仕方が、創造的(クリエイティヴ)で想像的(イマジネイティヴ)だと思うのである。
こういう、ちょっとしたイマジネーションというのが、文法の練習問題にだって欲しいのだ。
別に日本の先生にだってイマジネーションが欠けているとは思わないのだが、どうして教科書はそうならないのであろうか。
(だったら自分で書けよ、と言われるかもしれんが)