ブラックなSF短編

K大での新学期の授業に向けて、講読のテキストを探している。
先学期、一部の学生さんの希望で初めて短編小説を3つほど読んだら、わりと評判がよかった。
(加えてこのときは、進んで僕の授業を取ってくれる常連さんたちが多かったので、授業がすごく楽しかった)
その楽しさに味を占めて、今学期も短編小説を読む予定。
いろいろ短編を読み漁っているのだが(というほど本当は読んでいないか)、なかなかこれというのがないんだよなあ。
ちなみに、先学期読んだ三つは、
Marcel Aymé, "Le Nain"
Guy de Maupassant, "La Parure"
Roger Grenier, "La Gloriette"
モーパッサンは定番だが、基本的にオチがあるもの、という基準で選んだので、これはやはり外せないと思って入れた。
エーメの「小人」はオチはないが、書き出しが最高。書き出し読ませたら、学生たちはすぐに、これ読みたい、と言ったものである。
グルニエは、短編の書き手として個人的に好きな作家だが、選んだのは、意外な書き出しから意外な着地点まで、名人芸の文章で心地よく導いてくれる佳品。ロジェ・グルニエはやっぱり文章がいいんだよなあ。学生の評判もまあまあよかった(と勝手に解釈している)。

そんなわけで、ちょっと毛色の変わったものも、と思ってSF短編集を読んでみた(といってもとりあえず最初の一編を読み終えただけだが)。
Pierre Bordage, "Nouvelle Vie™"(L'Atalante, 2004)
西暦二千何十年だか何百年だかわからないが、特殊な遺伝子を持つ家族の人間が、3代にわたって自分の体を遺伝子会社に売り渡す話。
ちょっとぎょっとするようなブラックな設定だが、本当にブラックなのはその結末の方、という物語で、後味いいとは言えないけれど、かなり面白く読んだ。使えるかも。