そこには労働と自由がある

SFCで新学期初めの会議。当初、懇親会まで出るつもりだったが、依然として風邪が治らないため、会議だけ出席し、夕食はキャンセルして帰ってきた。
久しぶりに行くと遠い。ほとんど旅行である。
授業が始まって毎週行くようになると慣れてしまうのだが。
交通費も2000円ほどかかるし、食事がなければ会議にだけ出ることもなかったのでは、という気もしつつ、一応職業的倫理感を奮い立たせたのである。
(実際しかし体調悪かった。久しぶりに外に出た病み上がりの人みたいに、つーか病んでるんだが、電車に乗るだけでこたえた)

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近所の図書館で、デニス・ジョンソン『煙の樹』(白水社)を借りてきた。100ページほど読んだが、さほど面白くならないので、もうやめると思う。
新学期も始まるし、ほかにやるべきことが山ほどあるので、こういう長い本を読み続ける時間がない。
ただし、この本の名誉(?)のために言っておくと、まったく面白くないのかというと、そうではなくて、むしろすごい小説なのだと思う。
会話のやりとりが、何というか、ある種のセンスを感じさせて、それがこの小説の妙味の一つになっている。
いくつか、引いてみる。

「あんたのことちっとも好きじゃなかった」とジェームズが言い出した。
「分かるよ。俺もだ」
「俺もだよ」
「ずっとお前のことを短小野郎だと思ってた」
「ずっとあんたが嫌いだった」
「本当にごめんよ」(p.17)

コルホーズ農場ってどんなだ?」
「働きたいか? そこには労働と自由がある」
「でも俺たちずっと自分だけでやってきたよ。今だって自由だ」
「農場での自由はまた別のものだ」(p36)

「どこにいるんだ?」
「キッチンにいますよ。先に朝食にしますか? 卵いります?」
「コーヒーだけ頼む」
「ベーコンエッグは?」
「コーヒーだけにしてもらっていいか?」
「卵はどうします? 軽く両面焼きで」
「分かったよ、持ってきてくれ」(p.41)

わかりやすい物語を求めて読んではいけない小説だということはわかるし、じっくり取り組めばきっと面白いと思う。
ただ今は折悪しく時間がね。もっと若くて体力と時間のある人向き。(ということにしておこう)