シューマンの指

奥泉光シューマンの指』読了。
なるほど、傑作。
読みながら、昔勉強したウェイン・C・ブースの「信頼できない語り手」の話を思い出した。
2重底、3重底の仕掛けで、見事にだまされた、というほどではないが、十分に楽しませてもらった。
ふつう、凡庸な推理小説の書き手が書くこういう何段もの仕掛けは、いかにもそのためにしたという感じがして、パズルとしてなるほどとは思っても、なんかいまひとつ面白くないのだが、これは、それこそシューマンではないが、幻想を感じさせて美しいとさえ思った。