『ローマ帽子の謎』

エラリー・クイーン『ローマ帽子の謎』を読んだ。
なぜ今さらこういう古典の本格ミステリを読んだかというと、飯城勇三の『エラリー・クイーン論』が面白そうなので読んで見たいのだが、この本は完全ネタばれ満載の本なので、その前に一応(全部とはいわずとも)ある程度クイーンの代表作は読んでからにしようと思ったからである。
で、『ローマ帽子』であるが、一読してまず一言目の感想は「懐かしい」といったところだろうか。
小中学生の頃、こういう本格推理はよく読んだので(ヴァン・ダイン、クリスティー、そして特にカー)、その同じ匂いがぷんぷんした。
正直、この『ローマ帽』は、今の僕の読書観(?)からいうと、さほど面白くはない。大体長すぎるし(特に第1部)、小説的な興味からいっても、推理もの的な興味からいっても、文体的な興味からいっても、あまり感心しない。
ただそれでも、なぜか「悪くない」のである。こういう懐かしい感じは悪くない。
定年退職したら、毎日クイーンとか未読のクロフツの『樽』とか、フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』とか、もちろんクリスティーヴァン・ダインも、子供の頃読まずに結局今も読んでいない本格推理の古典ばっかり毎日読んで暮らそうかと思ったくらいだ。
しかし、とりあえず一冊読んでわかったが、こりゃ飯城氏の『エラリー・クイーン論』が読めるようになるには数年かかるな。
こういうもの読むより、読まなきゃならない研究、授業関係の本が山積みだもんなあ。

ところで、僕が読んだ『ローマ帽』は創元推理文庫の井上勇訳だが、これはさすがにもう賞味期限が過ぎてしまっているのではないかな。クイーンの〈国名シリーズ〉全作、誰か改訳すべし。